些か憚られるが、非常事態宣言が解除された5月末、営業している袖ヶ浦フォレストレースウェイへと走りに伺った。
開幕戦以来、街乗り以外しておらず、久しぶりのサーキット。 サーキットに向かう道は私が知っている交通量、空いてて走りやすい道は快適だが、交通量が多いことが何だか少し嬉しい。
伺った日は平日、最近は平日でもガラガラな事は滅多に無い袖森だが、この日は10数台。 朝イチのコンディションが良い時間帯を走ろうかと思ったが、どうせ今回はリハビリ。 少しでも空いている時間枠の方が良いと考え、2枠目を選択。
2枠目は私を入れて7台ほどだったが、なんと私の後ろにはマクラーレン。 マクラーレンだとは解るが、種類までは見分けがつかないので型番は解らない。 先程サイトを訪れてみたが、どれも同じように見えて私には違いが解らなかった。(マクラーレンが好きな方、申し訳ない)
どの種類かは解らないが、私の車よりも遥かに高性能であることだけは明確。 先に行って頂こうかと一瞬思ったが、比較的得意としているアウトラップで先行逃切を選択。 恐らくだが、お互いが得意なところが異なると思うので、絡まないように走行するのがお互いのためになる。
さて久しぶりの走行、車のインフォメーションを感じ取るため、全身を研ぎ澄ます。 先程、アウトラップは比較的得意と書いたが、無謀な速度でコーナーに進入などはしない。 そのようなことをすると、適温に達していないタイヤを壊して無駄な摩耗を起こしてしまうし、ブレーキにも熱が均等に入らずにジャダーなどの原因にもなる。
貴兄は、走る時に何を気にして居られるだろうか。
私が若い頃に好きだったライダーがYouTubeでライディングチャンネルという動画を配信されている。 これは主治医から教えていただいたのだが、少しだけ2輪のレースを齧っている時に知りたかったことばかり。 その、本間利彦さんのチャンネルを見ていると、私が4輪において自己流セッティングらしき事をしているのと少し被ることが有り、私のやり方も強ち間違っては居ないかも知れないので、少し語ってみたいと思う。
まずはバネレート
前後のレートが違っても、ストロークは同一の量を確保するようにしている。 色々な考え方があると思うので、力説しても仕方がないし、私のようなド素人が語っても意味がないのは百も承知。 だが、前後のバネが同一量のストロークを確保するのを基本としているのは間違っては居ないように思うのだ。 プリロードを掛ける時は前後ともに掛ける。 どちらか一方だけ掛けるのは、バネレートが適切ではないと思う。 以前はプリロードを掛けていたが、近年はプリロードゼロ。 そのほうが靭やかに動いてくれるので。
テンダーとかヘルパーなどと呼ばれているバネは基本的に使用しない。 そのためには全長調整式の車高調整タイプが良いと思っている。 後述するが、車高をミリ単位で調整するには全長調整式でなければ困難だ。
バンプラバーの存在
私はバンプラバーには当てない。 バンプラバーをセッティングの一つとして使用されている方も居られるが、私はあくまでバネレートのみで車の姿勢を制御したい。
先程、ストローク量の事を書かせていただいたが、ロッドにマーキングを施し、最大限に縮んだ時にバンプラバーまでのクリアランスを前後同一にしているのは私の拘り。 バンプラバーに当たるようではバネレートが足りないか、ロッドがショートすぎてストロークを確保できていない筈。
バンプラバーが大きいとストロークが減ってしまう、そのため私は最低限な大きさのバンプラバーを装着している。 流石になしではダンパーを壊してしまうので、フルストロークした際にメタルタッチしないような最低限の大きさのものを装着している。
次はダンパー
ダンパーセッティングは効かせすぎないことにしている。 これも諸説あると思うが、私はバネが主体で、ダンパーは車がユラユラしなければ良いので、殆ど効かせない。 特に縮みは無くても良いとさえ思っているほど仕事をさせない。 そして伸び側はお釣りが来なければOK。
そのような考え方なので、迷った時は柔らかくするし、セッティングは必ずユルユルから始める。 路面のうねりがある時に、タイヤが路面から離れてしまってはトラクションが失われるため、伸び側も強すぎると丘越えコーナーなどではトラクションが抜けてアンダーや唐突なオーバーが起きてしまう。 どうしてもバネとダンパーで追従できない路面となる場合はどうするか。 そのような時はブレーキやアクセルも併用して路面を捉えるコントロールを行う場合も有る。
私のようなド素人相手に、走る時は何に気をつけているかと聞かれる時があるのだが、その時は「4つのタイヤの状態を感じながら走る」と答えている。 4つのタイヤに仕事をさせる走り方をしろと、私の師匠である方に言われ続けたのだが、必ず気にして走行するように心掛けていたら、いつのまにか4つのタイヤを感じながら走るように成った次第。 走り慣れてくると、車からのインフォメーションでアクセルを入れて良いか、ステアリングを入れて良いかを感じられるようになる。
車高
基本的に、やや前下がりの状態から始める。 これはエリーゼがミッドシップでフロントが軽いから特に。 やや前下がりにしているのは、コーナーからの脱出時にフロントのトラクションを少しでも保ちたいからなのだが、フロントの伸側減衰を路面追従性が犠牲にならない程度まで締め込んでも加速時にフロントがヒョコッと上がってトラクションを失いやすいようであれば、フロントを更に下げるなどの車高調整で辻褄を合わせてやる。 勿論、やりすぎると尻軽になってしまうのでバランスの見極めが大切。
車高は低ければ低いほど私は良いと思っている。 まず感じられるのがダウンフォース。 車高が低いほうがダウンフォースを、より強く感じられる。 次に足周りを支えているアーム類、いわゆるバンザイアームは決して悪いと思っていない。 逆に下向きセットにしていると、ロールに伴ってトーリンクの支点間距離が変わってトーが変化しすぎて挙動が不自然になる。
トー調整
サーキットを走るなら、基本的にリヤはややトーイン、フロントはゼロから、ややトーアウト。 これは簡単だから、ご自分で試してみれば良い。 弄る前に、必ずマーキングとメモを忘れずに。 元に戻せなければ迷路に入ってしまう。 やや、と書いたがイン・アウトともに2ミリ以上必要になる場合は根本的にトーが原因ではないと思う。 トー調整の記述が後ろに来てしまったが、最初にすべき事かも知れない。 ただし、このセットでは高速道路や轍ではハンドルを取られるのでサーキット重視でなければオススメはしない。
キャンバー
これはタイヤの当たり方とコーナー進入時とクリッピングポイント、そしてコーナーからの脱出時のフィーリング(面圧)を感じて調整。 リヤを3度前後付けていても、サーキットオンリーであれば、イン・センター・アウト共、綺麗にタイヤが減っていく。 キャンバー角度が適切であれば、ラジアルタイヤでもSタイヤでも、キレイな摩耗の仕方をするのだが、私のフロントは恥ずかしながらアンダーセッティングが好みのため、どうしても外側が減りやすい。 ロータスはキャンバー調整がシムの抜き差しだけで簡単に調整できるため、スマホの角度測定アプリなどを利用して手軽にできる。
キャンバーも街乗り中心であれば前後とも2度以内が良いかも知れない。 街乗り主体の方は、タイヤの偏摩耗に注意。 内側がカーカスが現れているのに気付かず高速道路でバーストした人も居る。 これが一般的な国産車だと、キャンバー調整だけで一苦労。 とてもサーキット現地で調整する気など起きないほど超絶面倒。
ブレーキングとアクセルワーク
時と場合で踏み方が異なる。 丘越えのブレーキングで踏力を一定にすると、丘を越えた時にフロントがロックするのは当たり前。 コーナリングも然り、丘越えで曲がりたいならフロント荷重を抜かないようにブレーキを少し残して舵を入れるか、アクセルをジワッといれてフロントが上がらないようにボトムスピードを上げるコーナリングにする。 同じ丘越えでもタイトコーナーか、速度の乗るコーナーかで走り方が変わる。
加速する時に全開にしたい気持ちを抑えてフロントのグリップを失わないように加速したり、カントの有るコーナーではタイヤの面圧が生きるライン取りとアクセルワークを考えたりなど、素人なりに色々と試行錯誤すると見えてくるものが有るものだ。 筑波サーキットなどはカントが大きく付いているので、これを利用しない手はない。 そうなると、一般的なアウトインアウトが正解ではないこともある。
ここで一つ、若い人はご存じないかも知れないが、アイルトン・セナというF1ドライバーのアクセルワークが特殊で、それをセナ足と呼んでいた。 彼は小刻みにアクセルのオンオフを繰り返すのだが、これが私には理解できない。
アクセルを頻繁にオンオフさせると、ヘタクソなタクシードライバーの車に乗ったときのように車が前後に動いてトラクションが安定しない。 これでは4つのタイヤに掛かる面圧を最大限に使うことが出来ず、タイヤが潰れず結果的に横Gの値が上がらない。 アクセルのオンオフはゼロか1ではなく、細かくトラクションを掛けるため繊細に使う調整器具でも有ると思うのだ。
そしてロガー
色々な試行錯誤をデータ取りし、V字ラインでボトムスピードを落として、立ち上がりの加速重視とする場合と、ボトムスピードを上げて通過速度重視とする走り方、それをあとからログを見てタイムが出る方を選べば良い。 ただし、レースはベストなラインばかり走れるとは限らないので、時と場合によって様々な対応ができるように走りのバリエーションは増やしておきたい。
練習時に遅い車に塞がれた時など、レースでもこれは頻繁に起こりうるので、タイムの落ちを最低限に留める走り方を覚えておく必要がある。 また、そのような時に限ってレースでは直後にライバルが居たりする。 ブロック走行はして欲しくないし、しないように心掛けているが、横や後ろに居るライバルにベストなラインを走らせないという手法も有る。
ライバルが有利なラインを走っていたとしても、ブレーキング競争で勝つことも有るが、F1に出場していた時の佐藤琢磨のような無謀なツッコミは迷惑千万。 あれは私的には許しがたい。 イチかバチかで懐に入るのは絶対にやめていただきたい。 決して外側に居るライバルを弾き飛ばすような走りはせずに紳士的に戦って欲しい。 一方的な衝突はレーシングアクシデントでは無く、故意なのだ。 111cupでは失格となる。
一方、格上の車両が後方から迫ってきた時、お互いが嫌な思いをせずにパスさせる走り方というのも覚えておいて損はない。 此方がライバルとバトル中に格上車両が後方から来て、格上車両に譲ったつもりが、ライバルまで前に行かせてしまった事も有る。 その時はまだ、私の抽斗が足りなかった。
此処まで書いて、タイヤの空気圧について触れるのを忘れていたが、メーカー推奨値は温間だと思うと丁度良いかも知れない。 これは完全に個々の好みなので111cupの中でも千差万別。 私のように低い空気圧でタイヤをブレーキングやコーナリングで潰して走るのが好きな人と、高圧で抵抗を減らして足のセッティングで勝負する人もいるが、車重に比例して空気圧が高くなるのは間違いない。 これもご自身でタイムとフィーリングにより好みの値を探してみれば良いと思う。
話が逸れ過ぎて袖森を走ることが何処かに行ってしまったが、あまりに久しぶりすぎて、感覚を取り戻すのに時間を要してしまった。 だが、何とか丁寧に走ることで納得できるタイムが出たのでリハビリは出来たと思いたい。