今年の111cup開幕戦は断念したが、私としては屈辱的だった。
あれだけ周到に準備を半年近く前から始めていたのに、シェイクダウンでの感触が思わしくないだけでなく、ヘッダータンクから水を吹いてしまった。 先月も書いたが、111Sのノーマルと戦闘力に大きな差が感じられなかったのには落胆した。
「圧縮比がノーマルではダメでしたね」、とは今回お世話になっているライドモーターワークスの渡辺氏の弁。 彼とは様々な話し合いをした。 安心して楽しめる仕様を求め、ノーマルエンジンにパイパーの285カムセットを入れてノーマルより+20馬力仕様を当初検討した。
私は111cupではE1クラスというNAエンジンに手を入れても良いクラスに在席しているのだが、戦っている相手は2ZZエンジン搭載のNAエク2と211NA。 111S如きで歯が立つ相手ではない。 尤も此処最近は不調が続いて本来の力も出せていないのだが。
そんな事から長く楽しめる仕様を格安費用前提に依頼したのだが、ノーマルと殆ど変わらないという結果に愕然。
予算額は超えてしまうのだが、やはり戦えるクルマにして欲しい。 そのようなことからノーマルピストンからハイコンプピストンに変更して圧縮比を上げ、サージタンクもエク1と同等の大容量のものに交換。 スロットルは所謂4スロという、結局はローバーエンジンチューニングの定番コースになってしまった。
だが、これでもテスト走行ではイマイチ。 期待していたほどの炸裂感があるパワーでは無い。 これでは同じテーブルに付くことさえ出来ないではないか。 何度も何度もバルタイ変更などを行ない、メーカー推奨値など無視した試行錯誤が続いた。 そしてとうとう第2戦の2日前、漸く高回転で少しパンチを感じられるようになった。
と、思ったら今度はライトがつかなくなった。 ウインカーも駄目。 ハザードをつけるとライトが点滅する状態。 明後日はレースなのに、渡辺氏と夜中に色々と探ったが原因が見つからない。
これでは車検に通らないし、抑々早朝の移動も不可能。 と、青ざめていたら「何とかしますので今宵はお帰り下さい」 と心強い言葉を口にしてくれたが、私は心配で仕方ない。 翌日の仕事も手に付かない状態だった。 が、その日の夕方に連絡すると、「直りました」とのこと。
涙が出るかと思うほど嬉しかった。
原因はメインハーネスのコネクター、カウルの中に大きなコネクターが有るのだが、それのアースが接地不良を起こして焦げていた。
1年ぶりのレース、興奮して寝付けなかった。
いつも早起きなのだが、寝れないのでは仕方ない。 準備をして深夜にエンジン始動。
今までなら初爆から回転が上がって近所迷惑なのだが、今の仕様はアイドルアップなしなので思いのほか大人しい。 そのアイドリングもハイカムが入ってるとは思えない850回転で安定している。 しかも、如何にも大きなカムが入ってるぞというバラバラしたアイドリングではなく、粛々と850回転でエンジンを揺らすこと無く回っている。
水温が少し上がってから自宅を出発。
警備員も居ない時間帯だったのでパドックにポツリ。
この後、警備員がやってきて当然のごとく強制退場。
やはり私的にはレースは見るものではなく出場するもの。 心の8割は不安と緊張だが、2割は闘争心。 いつも不安が勝って些細なミスを連発するので、少しでも冷静になるように心掛けているのだが、さて、今日はどうなることやら。
予選
愚かなことに動画は誤って削除してしまった。 せっかくの自己ベスト更新した証拠動画なのに。
4周目にはエンジントラブルでオイルを出してしまった車両が発生したことから、タイムは路面コンディションの良かった3周のみ。 割りと上位な結果と成ったのだが、幸いにして比較的クリアラップを確保できた事と、生産は去年のモノだが新しいタイヤを履いてきたのが大きな要因だろう。
復帰戦は比較的眺めの良いところからスタートできそうだ。
決勝
なんと、人生初のスタート成功(私的にだが)。 スタートで誰にも抜かれなかったどころか、初めてスタートで1台抜けた。 恐らく2度とない快挙である。 ということで、必然的にトップタイムを出している此処最近成績の良い常勝77号車と戦うことになるのだが、あちらはスーパーチャージャー付きの260馬力。 此方はノーマル+20馬力の165馬力程度なので勝機は殆ど無い。
車両の軽さだけは誇れるのだが、パワーウェイトレシオ云々よりも筑波のバックストレートで先行されてしまうと抜きどころはない。 しかも彼はシーケンシャルのシフトを導入していることから、シフトミスも無いしタイムロスも僅か。 と、スペック的には勝ち目はないのだが、スタートが上手く行って上機嫌な状況なので目一杯走りたい。
と思ったが、此方のパワーではやはり歯が立たない。 2ZZエンジン搭載車はNAでも過給器付でも、ロータスでサーキット走行を行う上でのベストチョイスだと思う。 ブレーキングやコーナリングで私如きが足掻いてもリスクが高くなるだけで勝機なし。 +800回転が使えるようになったエンジンでインフィールドを少しずつ詰めるが、ストレートで離されるというパターンが3周経過した際、第2ヘアピンで77号車が失速。 何が起きたかわからないが、なんとなんと、私がトップではないか。
こんなシチュエーションは今までに無いので冷静になれといっても無理。 真後ろには211NAのE1ライバル車。 焦る焦る。 ただでさえヘタクソなのに、輪をかけてヘタクソな運転に成ってしまった。 予選タイムはマグレと言われそうな情けないタイムしか刻めない。
万事休すかと思ったが、周回遅れに助けられたようで望外の総合優勝をしてしまった。 こんな事、二度と無いと思うが素直に嬉しい。 同行の渡辺氏にも喜んで頂けたが、何せ出来過ぎ。 出来過ぎで次が怖い。