6月25日(木曜日)午後2時、那覇空港に降り立ち、先に到着している仕事仲間と約束している夕食までの4時間を利用し、沖縄本島南側をプチツーリング。
今回の相棒はレンタルバイクのカワサキW800。
私の世代だと650RS、いやW3と呼ぶべきか、360度クランクというバーチカルツインが奏でる独特の素晴らしい排気音、高校生の時から大好きな一台なのだが、今となっては程度の良いものはZ2程ではないものの、とても高額であり購入できる望みはまずない。
ところがW650という名前で現代に蘇りったと思ったら、排ガス規制で消滅。 しかし漢カワサキ、排ガス規制と真っ向勝負し、排気量を拡大してW800となって戻ってきた。 勿論、今どきのバイクなので嘗てのW1やW3のような音は楽しめないが、鼓動感などはコンセプトが同じだと思うので受け継がれているはず。
始動に癖のあるキャブレター+キックスターターからインジェクション+セルスターターと此方も簡易に成り、パワーは400cc程度と然程変わらないもののトルクは800ccツインの強み。 スーパースポーツに乗れる自信はないが、コイツとなら上手くやって行けると直感した。
やはりカワサキ、男心を擽ってくれるじゃないか。
前置きが長くなった。
本題に行こう。
那覇空港に到着し、時間を有効に使おうと真っ先に飛行機から降りると身体に纏わり付くような熱気。
梅雨の開けた沖縄に着いたことを実感。
生粋のセッカチゆえタイトスケジュールは得意、早足で「ゆいレール」というモノレールを目指して1階のロビーへと降りた。 ところがモノレールの改札は2階で直結しているではないか。 セッカチを炸裂しすぎたようだ、慌てて2階へ駆け上がる。 仕事で使用する重たい資料と荷物を背負っているので背中が汗でグッショリ、資料が汗臭くならないか心配だ。
沖縄空港からゆいレールに乗ってひと駅、赤嶺という駅で降りた。 先程は熱気を感じたが、此処では東京とは日差しの強さが違うことに気がついた。 北緯が10度ほど違うため、自分の影が殆ど出来ず足元の辺りに丸くなっている。
この暑さの中を徒歩3分ほどでバイクショップに到着。 今回利用したレンタルバイクはウイリーという名前のバイクショップ。 ここが那覇空港から一番近く、車種も豊富で私が乗りたかったW800も在庫あり。
W800、店に到着すると既に私を待って居るかのように佇んでいた。
色は渋いダークグリーンメタリック。 偶然ながら、私のエリーゼやセローと同じような色である。
レンタルバイクの手続きを済ませ、持参したインナーキャップを装着してジェットヘルメットを被る。 サングラスを掛けてグローブを装着。 イグニッションをオンにするとメーターの針がフルスケールで動いた。 アナログ的なデジタル、現代のバイクだ。
少しアクセルを開けてセルモーターを回すと、ショップの店員さんから「インジェクションなのでアクセルは開けずに」と、鋭い指摘を受けて苦笑い。 今までの癖というか、バイクの始動時に若干アクセルを開けるのは癖になっているようで、此後も何度か同じことをしてしまった。
気を取り直して燃料コックは何処かと聞くと、インジェクション車両にはそんなものは無いとのこと。 メーターの中にあるガゾリン残量ワーニングに気をつけるよう指示された。 そういえば自宅に有るインジェクションのスクーターにも燃料コックは無い。
それではとバイクに跨る。 ライディングポジションはハンドルが若干低く感じる以外、概ね思っていた通りのようだ。 足つき性も良好。 身長1740mmの私は両足ベッタリで膝が曲がるほど。
一般的な握力を要するクラッチを握り、ギアをローに入れて注意しながらソロリと発進。
エンジン特性も思っていた通り、低速から粘るエンジンで扱いやすい。 シフトペダルの位置もブレーキペダルの位置も違和感なし。 但し、私の若い頃からの癖で爪先乗りをしてしまうのだが、そうすると、折角タンクに設けられたニーグリップ用ラバーから足が外れるし、膝の先端がエンジンの特徴的なベベルギアカバーに当たる。
もっとシート後方に座れば良いのかもしれないが、私のライディングポジションは比較的前寄りが好みなので避けられない。 これだけはどうにかしないと辛い。 購入することに成ったら一番に改善しなくては成らない。
さて、ルートは以下の通りで、回り方は海が見えるように時計回り。 貴兄もツーリングの際には時計回りを基本に検討を。 そうでないと折角の景色が見辛くなってしまうので。
豊見城市の街中は思っていたよりも交通量が多く、とても走りづらい。 オール下道で行こうと思っていたが予定変更。 那覇空港自動車道という高速道路の無料区間を利用して足早に市街地を抜けてしまおう。
低速域はトルクフルでとても粘るエンジンだが、高回転も侮り難く、高速道路で試しに回してみると綺麗にレッドゾーンまで吸い込まれた。 その時の振動はそれなりでミラーは見えなくなるし風圧も容赦無い。 そもそも、コイツはそういうバイクではない。 レーンを左側に戻し、走行車線をおとなしく走ることにした。
そうなるとコイツの鼓動が感じられ、周りの景色も楽しめて風が心地良い。 暑さは全く感じない。 空冷エンジンということで排熱を憂慮していたが、杞憂に終わった。 今の時期の沖縄で乗れるのであれば、東京で問題にはならないだろう。 問題はベベルギアと膝の干渉だけだ。
今回グルリと回った国道331は道幅が狭く、比較的曲がりくねった箇所も多い。 また、道路の継ぎ接ぎが思ったよりも多く、舗装の状態が良くないところも多々あった。 しかしそのような所でも、とてもしなやかな足が吸収してくれるので苦にはならなかったが、私の好みから言わせていただくと少し柔らかすぎるかな。 もう少し減衰が強くてもいいかと思うが、バネのプリロードのみ調整式のようだった。
さて、いよいよ左手に海が見えてきた。 沖縄らしいエメラルドグリーンの海だ。 日が当たっていると本当に綺麗でウットリするのだが、空には時折怪しい黒い雲が浮かんでいる。 天気予報では曇りと言っている予報と、雨が降ると言っている予報、そして晴れるという予報も有り、一体どれが正解なのか解らない。
プチツーリングの第1目的地は知念岬としていたのだが、海が見えてきたら我慢できず、あざまサンサンビーチという所に降りてきてしまった。 しかし、降りてみると観光バスが大挙してやってきており、人も沢山居て興醒めしてしまった。 人混みが大嫌いな私は隣の久高島安座真定期般待合所に移動した。
此処ではご覧のように時折黒目の雲がやって来てヒヤヒヤしたが、まぁ降られたら降られたで仕方ないと開き直った。 私は元々雨男なので仕方ない。 しかしコイツの佇まいは堪らない。 こうやって景色とともに眺めていると時間が直ぐに過ぎていく。 本気で欲しくなってしまった。
さて、港を後にして知念岬へ行こうか。
ここはグーグルマップの航空写真であたりをつけており、バイクのままで波止場のような所まで行けると踏んでいる。 グーグルマップでは流石に道の勾配までは解らないが、私のエリーゼでは走りたくないような急勾配の狭い道を用心しながら降りて行くと路が開けた。
一面のエメラルドグリーン。
此れだよコレ、
私が求めていたのは。
琉球石灰岩を積み重ねた人口の波止場が二本。
そして其処にはノンビリした釣り人。
しまった、こんなことなら街中で食べ物と飲み物を買ってくればよかった。 此処で時間を使いきっても後悔しない。 実は、走りだしてから暫くしてコンビニを常に探していたのだが、この国道331には港川というところの近くにファミリーマートが1軒あっただけで、その道程の中にコンビニが全くなかった。 いや、コンビニどころか食堂も無く、ファミレスも皆無。 有るのは怪しい「氷・弁当」と書いてある店舗のみ。
しかし、そんな事は今はどうでも良い。
バイクを止め、ヘルメットを脱ぐと聞こえるのは波の音。
此の音は近くに浜がある筈だ。
サンゴ礁の砂浜。
日が当たると綺麗な海が一層引き立つ。
本当に来てよかった。
琉球石灰岩で作られた波止場のブロックにも植物が根付いている。
逞しい生命力だ。
ここでビジネス用のワイシャツを脱ぎTシャツにしたが、下は残念ながらビジネススーツのパンツ。 荷物が多くなるので遊び着のパンツは持ってこなかったのだが、持ってくればよかった。 と、思いながらフト上を見ると展望台が見えた。 上からも見てみようか。
遠浅の海だから波が立たないようで穏やかだ。
心が洗われる。 それにしても静かな海だ。
心が洗われるといえば、前々日の6月23日に沖縄は戦後70年を一足先に迎えた。 沖縄の終戦は6月23日なのだ。 平和記念公園へ行かねばならない。
バイクに乗ろうとしたら我が物顔で私の足元を横切る野良猫。 孤高な感じだが痩せている。 長生きしろよ。
暫く走ると、この道中で唯一のコンビニを発見。 先ほど書いた港川のファミマだ。 もう時刻は4時を回っている。 サンドイッチをノンアルコールビールで腹に流し込んだ。 そして出発。
平和記念公園に到着。 しかし此処にも観光客が大勢いる。
心のなかで戦没者にコウベを垂れて足早に出発。
次は平和の塔だ。 場所的には断崖絶壁の喜屋武岬にある。 有名なひめゆりの塔を過ぎた先だ。 蛇足ながら、ひめゆりの塔の辺りは如何にも観光地化しており辟易してしまった。 どうも私は天邪鬼らしい。 遊園地とかアウトレットなどには近寄らないことにしているし。
バイクだと地図を見ながら走るというのが困難なため、時々止まってはスマホで今居る位置と目的地を確認しながら走るのだが、この喜屋武岬だけは情報が今ひとつ明確ではなかった。 その理由、来てみて漸く分かった。
なんと途中のルートが舗装されていないダートなのだ。 ダートとは言ってもフラットダートなので、セローならば何も問題なく走れるようなところだが、今回はレンタルバイクだし800ccの大型ロードバイク。 否が応でも慎重になる。 証拠写真を撮っておくべきだったな。
この写真、スケール感が伝わるだろうか。 此処は断崖絶壁なのだ。 この海だけは波が立っていた。
漸く到着した其処は誰も居ない寂れた場所。 中々の絶景なのだが、今でも此処で命を立つ人が居るようだ。 地面に埋め込まれていたリトグラフが胸に響く。
と、此処に来て百名伽藍を見ようと思っていたのに通りすぎてしまったことに気付いた。 先程の知念岬の直ぐ近くなのに迂闊だった。 時計を見ると4時半。 ここから百名伽藍まで戻るのは痛いが、後悔したくないので戻ることにした。
バックミラーの画像が揺れる。 回転を上げると振動が多くなるのは高速道路で経験済み。 白線のセンターラインでは追い越し可能。 トルクフルなエンジンで何台も追い越しつつ百名伽藍に到着。
流石に影が長くなってきた。 夕刻が迫ってきている。
此処は敷居の高い一泊7万円からという高級ホテル。
その琉球石灰岩で作られた佇まいだけは見ておきたかったのだ。
これで見ようと思っていた場所には全て行った。 あとは戻るだけ。 時刻は5時少し前。 バイクの返却時刻は6時40分。 ここから国道331だと27キロ、赤嶺まで渋滞がなければギリギリ行ける筈。
スマホでルートを確認すると、国道331ではなく縦に走るルートが出てきたが、街中をユックリと走っている時間はない。 先程走ったルートであれば交通量は知れている。 やはり当初の予定通り国道331を走ることにした。
結果的に走ったことの有る道を敢えて選んだのは正解だった。 到着したのは6時半、総走行距離110キロ。 燃費は800ccのバイクとしては驚異的なリッターあたり25キロ。 駆け足だったが内容の濃い4時間ツーリングだったと言って良いだろう。
■エアクリーナー
試作品バージョン1と2をテストしてみた。
どちらもitgと比較するとアクセルを踏んだ瞬間のトルクの立上がりが素晴らしい。 低速トルクが厚いのも魅力的だ。 だが、アクセルを開けている時間が多いとパンチが無くなる気がする。 そして、中速域にトルクの谷が出来、レスポンスが劣る回転域が生じてしまう。
また、最高出力を生み出す回転域では頭打ちが早く訪れてパワーが鈍る。 サーキットにおいてはレブリミットまで回しきる事を多用するので、これは決定的な差となってしまう。 そのあたりのことを依頼主に動画をログデータと共に送信した所、更なる改良を重ねると返信が来た。 技術者たるもの、そう来なくちゃ。
ということで、暫くはitgを継続使用することとなった。 スポンジクリーナーのitg、思っていたより性能は悪くないのかもしれない。 これはエアクリーナーテストを任せてくれた方も仰っていた。 但し、スポンジ故に経年劣化が激しく、長期の使用には耐えられないのがネックでは有る。
某ショップから次のテストのお誘いが来るのを楽しみにしているところだ。
■トラブル
決定的なトラブルではないが、癪に障る不具合が発生している。
1つ目
エンジンからのオイル漏れ。 今回積んでいるエンジン、ミッションケースとの接続下部に切り欠きがなく、クラッチのダストや漏れたオイルなどが排出される事を目的とした箇所が無いため、ドラシャ付近の空隙からオイルが漏れて周囲を汚しているのだが、これの原因が今のところ不明。 更にドレンボルト辺りにもオイルの雫が出来るので、このあたりにもオイル漏れの原因が潜んでいる。
2つ目
右後ろのハブベアリングを5月30日に交換したのだが、ベアリングが逝った時に発する「カチン」という音がアクセルオン時に稀に聞こえる。 交換したばかりで音を発する事自体が腹立たしい。 エリパーから購入したパーツの不具合だろうか。 あの部分はアップライトを外してドラシャから抜かねば不具合が生じているか不明なので面倒なのだ。
3つ目
アイドリング不調。 これはエンジンを載せ替えた直後から発生しているのだが、街乗りでも1,500rpm以上上げて走行すると、エンブレ時に回転が1,500rpmから暫く落ちなく成り、クラッチを切ってブレーキングせねばならず鬱陶しい。 また、1,500rpmから正規のアイドリング状態に落ち着かず、1,000rpm辺りから徐々に正規の850rpmに下がってくる辺りも腹が立つ症状だ。 原因不明。
4つ目
クラッチブラケットのクラック。 これはまだ断定できないが、おそらくクラックが生じていると思われる。 主治医に随分前に強化加工して頂いたクラッチブラケットだが、補強プレートを溶接した箇所の裏側に補強した箇所に沿ってクラックが生じているように思う。 そもそも、クラッチのレリーズはエンジンと一体でなければ成らないのに、ボディ側のミッションマウントに共締めと成っている事自体が設計ミスだろう。 エンジンの動きと違う動きをする所に固定すれば歪が出て当然である。
うっすらと見えている所に赤線を入れてみたが、既に割れているようにみえる。