記憶が確かであれば今積んでいるエンジンは4基目。 昨年のシーズン初め、クーラントにオイルが混じって中古エンジンを何もせずに載替えた。 割りと調子の良いエンジンで、去年の暮に立て続けで袖森と筑波サーキットの自己ベスト更新したのは御存知の通り。
それまでも主治医にはシフトダウン時のオーバーレブを咎められており、エンジンを労る走りをしなければVVCエンジンは脆いので壊れる事は解っていた。 だが、それを無視してタイムを削る走りをしていたらエンジンの寿命をも削っており、今回のブローに至ってしまったと思っている。
4基もエンジン交換をしているが、車両火災やオイルが混じったりしてオーバーホールには至っているものの、実はエンジンプローは今回が初だ。
その日は珍しく朝イチから4輪のスポーツ走行枠があり、意気揚々と朝早くからパドックへと向かった。 走行2時間前には全てのパドックが埋まるという盛況ぶり。 朝イチの枠は路面も綺麗に清掃されており、エンジンの吸い込む吸気温度も低く、2月の土曜ということで文句のない条件だから当然である。
この日走り終わったら帰宅してオイル交換をする予定だった。 本当は前日にオイル交換をと思っていたが、仕事が多忙で帰宅が深夜に成り、既に交換時期を過ぎていたが怠けてしまった。 交換していればエンジンブローは起きなかったのかもしれないが、それは後の祭り。 今更後悔しても始まらない。
さて、朝イチのライセンス会員走行枠、気合を入れてピットレーンに並ぶ。
前に居るFD3Sはアウトラップから気合の入っている私にラインを開けてくれた。 積極的にアウトラップを終了して1周目、まだタイヤは暖まらない。
2周目、少し温まってきたので様子を探るべく、アタック開始。 タイムは4秒2を少し切る程度と悪くは無いタイムだが、3秒台を連発することが当たり前のように思えてしまっている今では物足りないタイム。 更に上を狙い気合を入れるが、出走台数が多く容易くはクリアラップを取れない。
4周目、1コーナーを立ち上がり、4速から3速を飛ばして2速へのシフトダウンをした瞬間、エンジンが壊れる何とも嫌な音に包まれた。
バックミラーには白煙。 しかしオイルの混じった白煙ではなく、蒸気の白煙のようだ。
何れにしてもエンジンブローには間違いない。 オイルや破片をまき散らさぬよう、周囲の安全を確認してコースアウト。 車を停めてドアを開けると、背後から嫌な煙が車内に流れ込んできた。
以前はオイルブロックがもげて車両火災が起きたことが有るため、初期消火の重要性を知っていることから、本来は禁止事項だが、エンジンフードを一旦開けて火災が発生していないかだけは確認させて頂き、直ぐにフェンスの外に避難した。 勿論、グローブもヘルメットも装着したままだ。
ここからあと15分程度だったと思うが、30分以上立ち尽くしていたように感じた。 底の薄いレーシングシューズは2月の冷えた土を容赦なく私の足裏へ伝え、体温を奪っていく。 レーシングスーツの下は下着だけ、朝イチの走行枠時間帯に2月の寒空に立ち尽くすのは寒がりの私には苦行だった。
幸いにしてオイルやクーラントの流出もなく、車も安全な所に退避させたので赤旗に成らず黄旗掲示で済んだのは不幸中の幸い。 だが、それでも同じ時間帯の皆様には不快な思いをした筈。 今更ながら謝罪しておきたい。 「申し訳ございませんでした」
筑波サーキットのレッカー車に引かれてパドックに戻ると、仲間達が集まってくれて私の車両をピットの所まで押してくれた。 ありがとうございます。
魂が抜けてしまったエリーゼを見ていたら、此方も魂が抜けそうに成ったが、夕刻からの打ち合わせのためオフィスに向かわねばならない。 先ずは車を主治医の所に運ぶ手続きを取り、私自身も仕事に間に合うようにせねば。
任意保険のレッカーサービスを頼んだのだが、後からサーキットでのトラブルにはサービス適応外と知った。 そうであれば、サーキット近くのレッカー屋に依頼すれば良かったのだが仕方ない。
主治医の所で状況確認のためプラグを外して確認すると、外した3本のプラグはベッタリと濡れていた。 1本だけは何か起きているようで外れない。 少しだけクランクを回してみると、プラグホールから水とオイルが混じった液体が噴出。
どうやらシリンダーライナーが割れて水とオイルがシリンダー内に入ってしまっているようだ。 一気に大量に入り、ウォーターハンマーが起きたのかもしれない。 オイルフィラーキャップを外すと、キャップ裏側には此方も水とオイルが混じった証拠品が付いていた。
カムカバーの中も同様、只では済まない事を叩きつけられた。
エアクリーナーを外してみると、ドロッとしたマヨネーズ状の気持ち悪い液体が出てきた。 そしてスロットルを外してみるとご覧のとおり。 この様子だとインマニの中はマヨネーズまるけだな。
スロットルを外した所に何か異物がある。 これは何かと凝視したら、なんと金属片だ。 相当に凄まじい状況と成っていることが確実と成った。
インマニを外すと全てのインテークに金属片が見える。
破片は何れも複数のようだ。 既に絶望感しか無い。 もうこのエンジンは使えないだろう。
当然ながら、エンジン本体のインテークにも破片は散乱している。
ヘッドを逸ってやろうと思ったが、主治医から待ったが掛かった。 エンジンを下ろすには腰下だけではフックを掛ける所が無くなるので駄目らしい。 中を確認したかったが、今月は此処まで。
もっと丁寧なエンジンを労る運転をしていれば、せめて前日にオイル交換していれば、と先ほども書いたが悔やむことばかりが脳裏を走る。 後悔しても何も何も良くならない。 するなら反省だ、次に生かさねばならない。
次といえば開幕戦まで1ヶ月を切っている。 次のエンジンはどうする、いや、それより資金面が問題だ。