屈辱的な敗北だった。
電気系トラブルから復帰したと先月号では書かせて戴いた。 2回ほど練習走行のために筑波には赴いたが、今年の猛暑は初老の私には容赦なく、2枠購入していたスポーツ走行も1枠でギブアップ。 後の1枠は予約無しで来ていた若いエントラントに譲ってしまった。
昨年まではこんな為体は晒さなかった。 いよいよ引退かと一瞬弱気になったが、走るのが嫌いに成った訳ではない。 いや、寧ろ若い頃よりも好きになっているかも知れない。 ならば好敵手が居る内は身の程を弁えつつ、嫌なオヤジとして憚かる事無く纏わり付いてやろうかと思う。
ということでライバル諸氏並びに若獅子各位には暫し目上の瘤になるが、切磋琢磨して追い越していって欲しい。 そして次は貴殿が疎まれる存在になって下さればと。
さて前日。
明日の天気予報は残念ながら雨。 雨ならばキャンバーを立ててメカニカルグリップ向上とブレーキングの安定性を狙ったほうが得策だろう。 ということで、キャンバー調整用のシムを1枚フロント側のみ増やす。
と、ホイールを外して見るとブレーキキャリパーに違和感。 ピンの抜け止めに装着されているβピンが無い。
確かβピンなら工具箱の中に転がっていたはず。 と、探すものの見つからず。 いや、あったには有ったのだが、サイズが小さかったり大きかったりで、帯に短し襷に長し。
では何か流用出来ないかと探すと、いま首からぶら下げているスマホのストラップ先端に付いているリングが良い感じ。 後先考えずに此を使おうかとも思ったが、後で困るのは目に見えている。 もう一度工具箱を浚ってみると温度センサーの配線保護にしようするスプリングが目に付いた。
これは線間密着しているスプリングなので、途中でカットすればストラップ先端に付いているリングと同形状のモノが作れる筈。 我ながら良い考えだと自賛しながらサクッとスプリングをカット。
ふふふ、上出来上出来。
さて、シムも増したしタイヤを元に戻そうかと思ったが、外したタイヤには溶けたカスが多量にこびり付いている。 これではウェットグリップの低下は免れない。 シムを1枚入れてまでルメカニカルグリップに固執しているのに、このタイヤで戦う訳には行かない。
しかたない、アレをやるしかない。
カッターを使ってミミズ状のものを徹底的に撤去。 1本目は1時間ほど掛かったが、2本目からは手慣れてきて時間短縮、結局4本で相当な時間を要し腰痛をもたらした。 そして親指に水膨れが出来てしまったが、タイヤは何とか見られる状態にまではなったが、オッサンにはキツイ作業だった。
減らしたキャンバーも良い感じ。
さて、では雨樋と恒例のアイテムを装着しよう。
よし、これで準備完了。
そんな訳で練習不足ではあったが、当日を迎えた。
例によって早起きだけは得意なので殆ど睡眠を取らず、エントラントがフェイスブックに「おやすみなさい」と書く頃に「おはようございます」と書く私。
レースは心理戦 ...そんなつもりなど毛頭無いが、この趣味がなければ知り合わなかった若手の方々に敬意を示しつつ(嫌がられ乍ら)絡んでみた。 そして思惑道りのリアクションににやける。 いつも初老おやじにお付合い戴きありがとう。
さて、いつものように殆ど誰も居ない筑波サーキットに到着。 と思ったが、名古屋から遠征してきている大輔君は積車の中で休んでいるようだ。
起こさないようにと静かに行動。 近所に新しく出来たセブンイレブンで購入した朝食を摂っていると、大輔君の車が私の後ろにやってきた。 起こしてしまったらしい、申し訳ない。
「おはようございます」
「おはようございます」
「少し降って来ちゃいましたね」
「何とか持って欲しいけど、今日は無理だろうなぁ」
「そうですね、今日は宜しくお願いします」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします」
そう、降らないで欲しいと祈っていた雨だが、少しポツポツと降り始めた。 外で摂っていた朝食だが、仕方なく車内に持ち込んだ。 一時期に比べると熱帯夜こそ減ったが、それでも窓を閉めると暑いし曇る。 窓を少しだけ開けた。
食事を済ませ、スマホで雲の動きを確認すると、何とかこの辺りには厚い雲は掛からずに済むような流れのようだ。 出来ればドライで走りたいので、是非ともそうなって欲しい。
予選
小雨が降ったり止んだりを繰り返していたが、何とか路面は殆どドライと言える状況でコースイン。
走り出して直ぐにキャンバーを立てたことを悔やんだ。 やはりドライ路面に近いためか、明らかにアンダーステアだ。 初期応答はよいが、コーナリングスピードが増すとグリップが落ちフロントが逃げる。 これは拙った。
私はジムカーナタイヤと思って居るAD08Rの特性からして、サーキットのタイムアタックでは4周目までにタイムを出さねば下位に沈む。 アウトラップを除く3周目にベストをと狙ったが、クラス上位の車両と少し絡んでしまった。 ベストラップを狙うシチュエーションだけに互いに絡みたくなかった筈だが仕方ない。
この時期、そしてこの路面でも5秒台は出しておきたかったが届かない。 もう1周頑張ってみたが、やはりタイムは出ない。 ここで私は諦めてコースから離脱。 が、この後に路面状況が改善されたようで、予選時間後半に皆さんタイムが上がったようだ。
キャンバーを失敗し、クリアラップを取れなかったとはいえ6秒台とは情けない。 今まで嘗てここまで酷い予選タイムは無かったと思う。 確かにエンジンも歴代のエンジンの中では一番非力だが、私自身の劣化が激しいのが大きい。
予選順位は総合7番手、クラス順では4番手に沈んだ。
これでは駄目だ。 悪足掻きをするしかない。 先ずはキャンバーを戻そう。 しかし決勝までは1時間しかない。 ここは主治医に手伝って頂き、フロントのキャンバー調整シムを1枚抜いた。 取り敢えずこれでドアンダーからは脱却出来るはず、、、だ。
決勝
レースに於ける私の一番の鬼門、それはグリッドスタート。 もう10数年も繰り返している行為なのだが、決して慣れることはない。 苦手意識が益々増して、一向に向上しない。
グリッド順が上になれば成るほど緊張するのだが、今日は下位に沈んだので比較的冷静。 だが闘志は有る。 雨脚が少し強くなった。 ウェットは嫌いだが、塗れた路面の走り方は少し解ってきたつもりなので勝機はあるかも。
珍しくスタートは悪くなかった。 そして、私としてはこれが精一杯。
格上クラスの97号車より鼻を前に入れて1コーナーに進入。 だが、流石にBSKの手によるエク1チューンドマシン、143馬力如きが敵う相手ではない。 互いに引かずに並んだままS字へ。
このまま併走して1ヘアへと思ったが、私の居場所を確保してくれる相手なのか解らない。 彼とは今までバトルをしたことがなく、周りを見ているのかバトル相手の居場所を確保してくれる走り方をするのかも解らない。 オープニングラップで弾き飛ばされてはかなわないので、リスクを減らすため1ヘア手前で引くことにした。
バックミラーを見ても前を見ても、ほぼ1列に隊列が整った1ヘア立上りからダンロップへ。 1周目はみな様子見でペースが上がらないのは何時もの通りだが、それにしても今回はペースが遅い。
オープニングラップの2ヘア、最近赤丸急上昇中の5号車がライン取りをミス。 すかさずインから97号車が刺し、直線をクロスレシオのギアで繋ぎながら前に出た。 私もと思ったが、一皮剥けた5号車には敵わなかった。
エク2本来の動力性能を引き出す走りが出来ており、裏の直線で数台分離されてしまう。
クソッ。 私のエンジン、もう少しパンチが欲しい。
2周目。 コーナーでは97号車のペースが上がらない。 5号車も私も追いついてしまい、ブレーキを踏んで調整しなければ成らない。
そして直線では離されるという繰り返し。 これはプレッシャー掛けてミスを誘うか、譲って頂くしかない。 2周ほど冷静に後ろから見たのだが、97号車は2ヘア進入でフロントブレーキをロックさせている。
ブレーキがシビアなのか、踏み方が悪いのか将又雨に合わないパッドなのかは知る由もないが、あのブレーキングでは危険だしペースは上がらないだろう。 そう思って居ると、やはり次の周回からは更に各所でのブレーキングポイントが早まり更にペースが落ちた。
これに付き合うのは辛い。 直後にいる5号車も同じ思いだろう、歯痒ゆさが高まる。 なんとかこじ開けて前に行きたい。 ペースが上がらないのであれば進路を譲って頂けないだろうか。
次の周回、再び2ヘアで97号車がフロントをロックさせるミス。 5号車は上手く躱して追い抜いた。 私も空かさず追従したが、パワーのある97号車は最終コーナー入口までに私より半車身前にまで到達し、残念ながら抜くには至らず。
ここから10周近く後ろを走る事と成った。 途中でウインカーを出していただき「先に行け」と言われたが、残念ながら直線でフル加速されたら敵わない。 そんな事を繰り返していたら、スタートで出遅れた筈の55号車の姿がバックミラーに見えてきた。 紺色の車体に目映い白いストライプ、その車両があっと言う間に追いついて来た。
これは困った。 97号車にプレッシャーを与えつつ、55号車とのバトルにも備えなければならない。 なんとか先を譲って頂けないものか。 同クラスの55号車はブレーキングの達人。 私はブレーキングが不得手なのでバトルになると厄介な相手だ。
そんな走りをしていると再び97号車が2ヘアでイン側を開けた。 今度こそ、と、アクセルワイヤーが引きちぎれるほどペダルを踏み込んだ。 今度こそ行けるか...追い抜く際に97号車の運転席から手を挙げているのが見えた気がする。
何とかパスさせてくれた。 が、残りは僅か2周か3周。 ペースを上げる。 すると周回遅れの中に5号車と33号車が見えた。 思ったほど離れていない。 もしかしたら勝機が有るのか。
視界に入るまでには追いついたが、残念ながらバトル出来る位置にまでは至らなかった。
ということで予選の失敗は決勝に響くと言う事を嫌と言うほど思い知らされた訳だが、5号車は33号車をも交わして2位に輝いた。 これは素直に御目出度うと言いたい。 33号車も今回は情けない走りだったようで、二人で反省会だな。
久しぶりに今回は闘争心に火が付いた。 こんな悔しい負け方は二度としたくない。 しかし、ライバルが33号車だけでなく5号車も入ってきたことを喜びたいと思う。
でもヒトコト言っておこうか 「次は無いからな!」
真剣なバトルは大賛成。 お互いを尊重し正々堂々フェアに戦うという日本人が本来持っている心意気が好きなのだ。 次回は三つ巴上等、E2の真剣バトルを楽しみたい。
先月号では車高調整を何度か繰り返した事を書いた。 だが、納得の行く結果が出ていない。 コーナリング中に様々な要因があるとバンプラバーに当たると共に酷いときはフレームにドラシャが当たる。 これでは駄目だ。
さてどうする。
ハイレートなバネを試してみようか。
ということで今までリヤに使用していた11キロをフロントに回し、リヤに14キロのバネを入れてみた。
私はこの車、前後のバネレート差は1.25という係数が合っていると思うので、11キロに合うバネを探した訳だが、レートが高くなってくるとアイバッハといえども細かなバネ定数が揃っている訳ではない。
今回は少しリヤがハイレートと成ったが、試してみるしかない。
早速次のステージである袖森に持ち込んでテスト。
この日はまだ暑く、前回のようにヘバるのが見えていたので屋根無しで臨んだ訳だが、屋根無しだとヘルメットのシールドを全閉しなければ成らないことを失念していた。
オープンは涼しいのだが走っていると益々息苦しくなり、情けないが30分の連続走行は今回も出来なかった。 そんなに基礎体力が落ちているのか。
ところでフィーリングだが、硬いが思ったほど難しい車になった訳ではない。 確かに姿勢を作るのは楽ではないし、荷重を掛けても戻る力が強い。 ストロークが減った分、フルボトムはしなくなった。 プリロードもゼロにしたので乗り心地も極悪ではない。
これから暫くはこの仕様で遊んでみようと思う。
しかしフロント6キロ、リヤ7.5キロから始めたサスペンションだが、この10数年で徐々にレートが上がりほぼ倍のレートにまで成った。 タイヤも進化しているが当初はSタイヤに6キロ+7.5キロを履いていた事を思うと随分と私の考え方も変わったモノだ。
さてさて、ということでハイレートのバネを今度は筑波1000で試してみた。
結果は...使いこなせてない。 いや、使いこなせない。 しかし折角購入したので、もう少し遊んでみる。 上手な人はレートの高いバネを使いこなすと聞く。 このまま元に戻すのは余りに悔しすぎる。