2ヶ月も私を悩ませてくれたトラブル、何とか走れるようにはなったが原因は何だったのだろうか? 今までの経緯を整理しておこうと思う。
アイドリングが下がらなくなるトラブルは過去数年の間に何度か経験していた。 起きるシチュエーションとしてはサーキット走行直後が多かったのだが、十分にエンジンを冷やしてやるか、帰宅するまで大人しく走っている内に自然治癒していたため余り気にせずにいた。
だが、やがて頻繁にアイドリング上昇が起こるようになり必死に原因を探っていると、どうやらセンサー類にトラブルがあると不調になる事が解ったのだった。
−まずは何度も登場(交換)している水温センサー−
水温センサーが初めて壊れた時は狼狽えた。 それまで元気だったエンジンが突然不調になるのだ。 今まで2回ほど経験しているが、一度目はサーキット走行中だった。 急にエンジンが重くなり、アクセルオフでアフターファイヤーが激しくなるのだ。
そしてもう一回は渋滞中から抜けた直後。 やっとノロノロ運転から解放され、適度なペースで交通の流れに乗っていたのだが、再び渋滞に填った時にアイドリングが上がり電動ファンが回り出したのだ。
その時の水温は90度。 通常では回るはずのない温度なのに電動ファンが回り始め、しかもファンが回っているのにアイドリングが高いために発熱量に追いつかずに水温がジリジリと上昇を始め、95度ぐらいから下がらなくなった。 このまま上昇し続けてオーバーヒートするのではないかと、抜け出せない渋滞の中で冷や汗をかいた。
このように水温センサーが何らかの原因で異常値を感知するとECUが安全回路を読みに行くようで、燃調が濃くなると共にアイドリングが上がり、水温に関係なく電動ファンが常時作動したままとなる。 これはカプラーをはずしてみても同じ現象が起きるので一度症状を経験しておくと良いのかも知れない。
このセンサー、解体屋でMGFのセンサーを手に入れるのは安価ではあるがやめて置いた方が良い。 というのも、似てはいるがセンサーが違うようで、エリーゼ用のVVCエンジンに取り付けられているセンサーが98度で電動ファンのスイッチが入るのに対し、MGFのそれや古いスタンダードは103度(108度と言うのも有った)以上にならないとファンが回らないのだ。
私の経験では水温が100度を過ぎると途端にパワー感が落ちるようなので、100度を超えてから電動ファンが回るのでは遅すぎるのではないだろうか。
それにしても100度を過ぎてからのパワー制御はエンジン保護のためのデータを読んでいるのだろうか? それともエンジンルームの温度が高いため、単に吸入空気の充填効率が良くないだけなのか?
何れにしても、水温が100度を超えるというのは精神安定上も芳しくないので、交換する時は98度センサーをお奨めする。
そしてこのセンサーで一つ覚えておいた方が良いのが接触不良による不調だ。 センサーは雄型でハーネス側が雌型のコネクターになっており、そのコネクターにカラーというかパッキンのような物が奥にセットされているのだが、これが取れやすいのだ。 捲れてしまったり無かったりすると接触不良を起こすので、取り外す時は慎重に。
センサーが何度も壊れる事自体考えにくいが、こんなケースも有る。
−逝きやすいスロポジ−
最近知ったのだがこのスロポジも2種類有るようで、初期型はリターンスプリングがスロポジに内蔵されていて、スロットルのバタフライに組まれているスプリング無しでも自力で戻るようになっている。 そのせいで若干スロットルが重くなるようだ。 また、バタフライバルブのシャフトに取り付ける際には多少きつめのクリアランスになっている場合が多い。
後期型のスロポジにはリターンスプリングが内蔵されて居らず、シャフト取り付けのクリアランスも緩め。 何か理由があってスプリングが省かれたのか、コストダウンのために省かれたのかは不明である。
私がスロポジを壊してしまったのは恥ずかしいミスも有った。 スロットルの調整で、アクセル全開時にバタフライバルブが完全なる全開状態になるようセットしておいたのだが、いつの間にかアクセルペダルのストッパーが緩みスロットルのシャフトが曲がってしまうほどアクセルワイヤーを引っ張っていたのだ。
気が付いた時にはシャフトのガタからバタフライバルブが筐体と干渉するようになっており、スロポジのストッパーがアクセルのストッパーになっていた。 そして更なる全開を続けたために内部のブラシが破損してしまったのだ。
これは特異な例だと思うが、最初に壊れた時は何の前触れもなく突如としてアイドリングが上がり、水温センサーの故障と全く同様の症状が起きた。 しかしエンジンが冷えてる時は出なかったため、水温センサーなのかスロポジなのか原因追及に時間が掛かった。
センサーの故障はどちらも同様な症状となるため、最近は何が悪いか原因をいち早く知るためにも正常品を携行している。(水温センサーとスロポジ、そしてAACバルブは常時1つ余分に携行するようになった)
このような事例から、どうやらこの車のセンサー類に不調が起きた場合は、アイドリングの上昇と共に燃調が濃くなったり電動ファンが回りっぱなしになるなど、エンジンを保護する方向の不調具合である事から、私は今後「セーフモード」に入ったと呼ぶ事にする。
−不調になる状況と試行錯誤−
困った事にセンサーを交換しても直らない状況に陥ってしまった。 街中を流れに乗って走る程度では調子よく走行していても、パワーバンドをキープするような走りを行うと不調になってしまうのだ。
これも恥ずかしい話だが、ECUが冷えてると症状が出ないなどと間違った解釈をしてECUの位置を変更したり、エンジンルームにフレッシュエアを導入したり試行錯誤したのだが、結局はセーフモードに入ってしまう。
トランクの中の方が涼しいかと思っていたが、過酷と思えるエンジンルームの方が風が通り抜けるので、長時間の稼働ではデフォルト位置のほうが条件がよいようだ。
そのような事から今はECUを元の位置に戻した。
−泥沼のテスト走行−
暫くすると街中の走行では不具合が起きなく成ったのを受け、本当に大丈夫だろうかとテストドライブのために奥多摩に向かったのだが、今度はなんと交換したばかりのオルタの警告灯が点灯。
急遽行先をショップに変更し、到着早々リフトに上げてみると見事にオルタのベアリングにガタが出ていて発電不良。 冷却ダクトをオルタまで引き、エキマニにバンテージを巻いて、更にアルミのダクトで遮熱板まで工作したのに。
マレリーのオルタが悪いのか、レイアウトが悪いのか?
国産のオルタにして冷却対策と適切な回転域になるプーリー比を見つけないと、いつまで経ってもオルタは定期交換品になってしまう。 そのうち根本的な対策をしてみたいと思う。
そういえばオルタの件に関して、実験に協力して頂けるという方からのメールを戴いたのだった。(すいません○○氏、もう少しして動力系が落ち着いたらご連絡申し上げます)
早速オルタを交換し、今度こそ奥多摩へ向かおうと高速道路を降り環八の渋滞に填っていると....再びセーフモードに。
あと原因となりそうなところで残っているのはメインハーネスとエンジン本体(VVCユニット含)のみ。 今回は意を決してメインハーネスの交換に踏み切る事にした。
幸いな事にグローリーさんには部品取車から取り外したハーネスがストックしてあり、それを格安で譲っていただけると言う。(感謝)
これで水温センサー交換・スロポジ交換・AACバルブ交換(書き忘れていたが、ハーネス交換前にAACバルブも交換した)を経てメインハーネス交換まで行った事になる。
祈るような気持ちでエンジンを始動。 水温が電動ファン始動ポイントになっても不調の兆し無し。 これでパワーテストドライブが無事に済めば修理完了だ。
ということで奥多摩に向かったのだが、ペースを上げるとアクセルオフで回転の落ちが悪くエンブレが効かない。 まるで後から押されているような、2サイクルエンジンに大きなフライホイールが付いているような感じだ。 アイドリングと電動ファンは正常になってくれたのは嬉しいが...これではまだダメだ。
−走れるようにはなった−
途方に暮れて落ち込んでいる時、読者からのメールにVVCユニット不調からセーフモードになる場合があると書かれているサイトを教えていただいた。(名古屋にある木村自動車商会さん)
そのMGF(VVCエンジン)のサイトを見る限りでは
1. VVCオイルコントロールバルブの詰まり
2. VVCオイルコントロールバルブソレノイド(電磁コイル)の不良
3. 油温センサーの不良
4. カムシャフトのねじれ、曲がり
5. VVCピニオンシャフトの作動フリクションの増加
6. VVC偏芯カム機構の作動フリクションの増加
が考えられると書かれている。
ここで気を取り直して、もう一度全てのセンサーをチェック。(どうしてもダメならストックしている予備エンジンに載せ替えるつもりもあった)
なぜ再びセンサーチェックかと言うと、とある方からセンサーの相性が悪いと不調になる場合があると聞いたからだ。 だが、残念ながら手持ちのセンサーでは幾つか組み合わせるほどのストックはない。
ありがたいことにグローリーさんとWOTYSPEEDさんの協力を得て、水温センサー・スロポジ・AACバルブ、各々3つずつ用意する事が出来た。
水温センサーは現状で付けている物のままテスト開始。 まず最初にスロポジを交換してみた。 コレが最悪で、エンジンの始動すら難しいほど。 アクセルを開けていないと始動しなかった。 ということで1つ目のスロポジは早々に取り外し、2つ目のスロポジに交換。
2つ目の始動は良好だ。(というか、それが当たり前)
さて、実走はどうか?
もうこの頃には心理状態がドン底で、何をやっても上手く行かない気がしており(ということで2005.08は休刊)、アクセル全開にするのが怖いほどだった。
例によって奥多摩へ試走。 殆ど一般車の居ない時間帯を狙って全開。 もう少しレスポンスが良かったような、もう少しエンジンブレーキが効いたような気がするが、全開で走れるようにはなった。
そして翌週。
今度は違うスロポジにして久しぶりにいつもの箱根へ。 ところが今度は天気が良くない。 今回の表紙に使っている画像だ。 麓は快晴で星がキラキラと瞬いているのに、標高が上がるにつれてガスって来た。 と思ったら、雲の中に入ってしまったようで細かい粒子のような雨がジットリとフロントガラスに張り付く。
仕方なく山を下りて高速道路でテスト。 前のスロポジより若干フィーリングが良いような気はする。 だが、まだ本調子では無いような....。 今月のレースまで残された日は後僅か。
やはりストックエンジンに載せ替えか?
だが、若干レスポンスが悪い程度で、あの悪夢のような不調は再発しなくなった。 ということで、今のところハーネス交換は正解だったと言う事と、パーツの相性も有る程度関係するかも知れないと書いておこう。 そして今月のレースに今の状態で出走し、その結果次第で載せ替えるかどうかを決めようと思っている。
前回のレースからサーキットを走って居らず、公道での辛いテスト走行ばかりしていたのだが、その間にも細かいトラブルが幾つか起きた。 エンジン不調に比べれば、どれも取るに足らない事だが。
−5万キロを目前にしてバケットシートが悲鳴−
私のシートは無難なエリーゼ用エスケレート。 現在エスケレートを購入する場合、表皮の材質まで選択出来るようだが、私が購入した時は布地の色が数種類選べるようになったばかりの時。
エクセーヌ(アルカンタラ)生地が選べるようになったと聞いたのは最近だが、シートの老朽化で生地表面が薄くなる事を考えると、一般的なシート布地が補修しやすくて良いのかも知れない。
今回はヘタった生地にパッチを当てる事にしたのだが、これがエクセーヌだったらストレッチ素材のパッチをアイロンで当てる事は出来るのだろうか? しかし次に買う時はエクセーヌ生地だな、などと思っている天の邪鬼。
コノリーレザーとかアルカンタラなどという言葉は聞きかじって知ってはいるものの、私に手芸の趣味は無く、布地の補修方法など全く知らぬ。 あて布をするときは千鳥がけが正しい手法だったかな? 数十年前の家庭科の知識しかない私では話にならぬ。
そこで我が家で一番詳しそうな家内にシート補修を相談すると、ウチの近く、吉祥寺にユザワヤという手芸が趣味の人たちが行く店が有り、そこにはシートのような生地に適したパッチが有るという。 しかも簡単にアイロンで装着出来るという。 だが中年オヤジが手芸専門店に行くのは気が引ける....。
理不尽な交換条件を出されたが、自分で修理出来ないので仕方ない。 今回は頭を下げて補修材の購入と修繕をお願することとした。
この優れもの、2枚入りで500円。
説明書を読むとスポーツのユニフォームや体育着などに最適と書いてある。 しかも剥がれてきたらアイロンで再接着出来ると書いてあるし、剥がしたうえに再補修も可能らしい。
手触りは正にエスケレートの標準シート生地に近く、レカロのSP−Gなどにも応用が利きそうだ。 ストレッチ素材で出来ているため、シートのような難しい曲面にも皺を作らずに張り上げる事が出来た。
写真ではデジカメのストロボのせいでパッチが目立っているが、実際は殆ど解らないと思う。
しかし、この綻び始めた生地の位置、エリーゼ特有だろう。 乗り降りの際に尻や足が盛大に擦れるのだが、運転中には肘が当たる位置だ。 今までバケットの綻びというと、大抵は肩の位置に張り出した部分かベルトの部分と相場が決まっていたが、エリーゼはこんな所も特殊なようだ。
修理が終わった所で書くのもナンだが、シート自体は過酷な夏を何度か迎え、加齢臭の加わった汗を盛大に吸い込んでいるため、交換した方が良かったのかも知れない。
しかし大抵はオープンで乗っているし、ナビシートに人を乗せる事も無いのに加えて、シートのセットアップが非常に厄介な事を思い出した。 何枚ものワッシャーを使用して高さ調整に費やした時間と苦労を知っているだけに触りたくない所だ。
−クラッチブラケットに亀裂−
上の画像2枚で「へ」の字型に錆びているところがクラックだ。
応力が集中しそうな出隅部分からクラックが入り、ブラケット中央まで進行していた。 横から見た画像を取っておけば良かったのだが、面的には0.3ミリ程度の段差が生じていた。
このまま走行を続けていたら剪断破壊していたのは間違いないだろう。
これはミッションマウントの点検時に見つけていただいたのだが、気が付いたのがショップで良かった。 発見していただいたメカの方に感謝。
クラッチブラケットの補強は雑誌やショップのサイトなどでも拝見しては居たが、フィーリングアップのために補強する物だと勝手な解釈をしていた。 だが、実際に破断しかけているブラケットを目の当たりにするとコレもエリーゼのウィークポイントなんだなと実感した。
それにしても私の車、ウイークポイントを取りこぼし無く経験させてくれなくても良いのだが...。
その場で修理をしていただくこととなり、作業を見学させて頂いたのだが、ボックスコラムのように箱形状で補強をしていただいた。
そしてクラックの入った箇所は剥離して溶接で留めた後にアングル材で補強。 これで剛性が出るはずなのだが、クラッチ操作をしても鈍感な私には感じられなかった。 感じられないから破断しそうになっても気が付かなかったのか。
−ミッションマウント−
テスト走行時、左右の切り返しやアクセルのオンオフででコンコンと背後から音がする事に気が付いた。 これは過去に経験したミッションマウントか? 交換後に同じような距離を走ってきたから寿命的には来ているのかも知れない。
先ほどのブラケット交換時にマイナスドライバーでこじってみたのだが、以前グサグサに成った時ほどのヤレは見受けられないものの、ゴムは劣化しており少し囓っているようだ。
囓りが見えると言う事は、やはり何かががコンコンと当たる音がするのはコレかも知れないと言う事で、ミッションマントのみ交換してみた。(後にマフラーステーが当たっている事が解った)
実際に外してみると縦に若干潰れており、中のゴムも少し囓られていた。 もう少し分かり易い状況だと交換時期の目安が付くのだが。
こんなに短期間でマウントが逝ってしまうとなると、ミッションマウントが一番劣化する所なのかも知れないが、他のマウントは大丈夫なのかと不安になる。 オイルパンの箇所は何とか目視で確認出来るが、タイベル側のマウントは見ても解らないので厄介だ。
何れにしても私の使い方では早めの周期でマウント類を交換するのが良いらしい。 勿論、個々の使い方によって劣化度は異なるが。
次はお約束のハブベアリングが来そうな予感....