これだけの症状があるのではエンジンを開けて見る他にない。
本当はロードスターの時のように自分で下ろして中身を確認したいところだが、複雑な機構を持ったVVCで有ることと、予備エンジンも無く、自分で掴んでいる情報も乏しいという状態ではとても素人が手を出せる状態ではない。
そこで今までの経緯を全て伝えた上でショップにお任せした。
ノッキングが出ているのは燃圧が足りないのだろうか? それとも何か他の要因でエンジンが根を上げたのか? そんな会話を交わしたのち、車を預けた。
一般的にはエンジンオイルに混じる金属粉は「メタルでしょう」と言うことになると思うが、幾つかのショップに話をして伺ったところ、18Kというエンジンのメタルが逝った話は聞かないと言う。
それを根拠にして自分を安心させたかは定かでないが、そんな状態のエンジンを1年以上も回してしまった自分が情けない。 と、今は後悔している。
あれこれ妄想に耽るより「百聞は一見に如かず」。
そしてその翌日、預けたショップから携帯に連絡がきた。
「メタル逝ってますねぇ」
「かなり酷い物もありますよ」
もしこのまま翌週も構わず走っていたらと考えると、完全なブローをせずに済んだ事に胸をなで下ろしている。 既にダメージは有るのだが、とりあえず寸止めで助かったと思うことにした。
被害がメタルだけで済めば御の字なのだが、それほど酷いと言うことは大なり小なりクランクジャーナルなどにも被害が及んでいるだろう。 曲がり修正程度で済む事を祈りつつ週末にショップへと向かった。
シリンダーブロックをクランク側から写した画像。 クランクメタルに傷が付いているのが解るだろうか。
これが拡大画像。 かなり恥ずかしい絵である。 ここまで成る前にエンジンを開けるべきだ。
両端のメタルに比べればマシかも知れないが、こちらもダメージは深い。
こちらはクランクキャップともいうべきラダーフレーム。 この18Kはカムのキャップも同様のマウント方式をとっている。
メタルの説明は画像を見ていただければ不用だろう。
ではクランクの状態はどうだろうか。
パッと見は綺麗かと思いきや、さに非ず。 よく見るとクランクシャフトのジャーナル部分よりもコンロッドメタル部分のほうが状態は悪い。 残念ながら再使用は諦めた。
クランクシャフト交換である。(この時、段々と事が大きくなっていく事に狼狽えていた)
一方こちらは燃焼室。
若干のカーボンはあるモノの酷い状態ではない。 恐らく、クランクケース内で発生したブローバイガスが内圧によってシリンダーヘッドへと抜け、ブローバイガスホースからインテークマニホールドに戻されたガスが燃焼室に入って燃焼したのだろう。
清掃だけで再使用は可能。 オーバーヒートさせた訳でもないのでヘッドの歪みも無いと思われる。 初めてジッと見たのだが、昔のエンジンと違って燃焼室の形状はシンメトリーなペントルーフでは無いようだ。 最近の燃焼室形状は、火炎伝播やデポジットなど様々な要因の蓄積からコンピューター解析で得られた形状という噂だが、コイツは如何なのか?
ピストンのトップはフラット。 というか若干凹んでおり、リセスは少々。 ターボ用のピストンのようにも見えたが、この18Kというエンジンのロングストロークぶりを考えれば納得か。
さて、ブロック上面から落ちて沈んでしまうという話しを聞くシリンダーライナーの状態はどうだろう。 そしてピストンとコンロッドとメタルの状態は?
ライナーとピストンは綺麗だった。 クロスハッチもしっかりしているし、段付きもない。 首を振った形跡も、僅かな縦傷さえ見あたらず、むしろベストかも知れない。
この絵はクランク側から見たライナー。 本来の目的からすれば、燃焼室側から撮るべきだった。 角が落ちやすいという段差ばかり気にしていたので、このような画像になってしまったのかも知れない。
しかし問題はコンロッドメタル。 本当に酷く、全滅だ。
圧入タイプのピストンピンのためピストンの真裏だけは見えないが、恐らく問題はないと思われる。 今時の短いスカートにも裾を当ててしまった様な傷は見あたらない。 (画像が無くて申し訳ない...興奮というか、動揺していて取り忘れてしまった)
ライナーが綺麗なのだから当然か。 一つ心配なのはピンの摺動部分。 囓っていないことを祈っている。 (圧入よりもサークリップで外せる方が便利だと思うのだが)
全滅具合が解るだろうか。 傷なんて当たり前で、表紙にも使った剥離も酷いモノは1つのメタルに3箇所。 キャップ側のメタルは全てに剥離箇所があった。
エンジンオイルに金属粉が乱舞しているという事の顛末はこういうコトであった。 そして、タペットクリアランスが適切でないような音の原因もコレであった。 同じエンジンを搭載している諸兄、私のような惨劇に見舞われる前に、異音を発したら覚悟を決めてエンジンを開けて点検して欲しい。
クランク交換は「エンジンブロー」と言っても過言ではないと思う。 (今回はグローリーさんのご厚意でストック品を御提供して頂ける事となった。 安堵+感謝。)
話は変わるが、今までの私であればエンジンを開けるならば、序でにあれもこれもと欲張ったメニューに手を出すところだ。 だが今回は違う。 ノーマルで良いのだ。 どこかで聞いたことのあるフレーズを用いると「スーパーノーマル」で良いのだ。
エンジン内部に純正でないメーカーのパーツは使わない。 ポートなども削らず各所のクリアランスを適切にし、フリクションロスを軽減すればよいと思っている。
クランクは、組み合わせるクラッチとフライホイールとともにダイナミックバランスを取る。 フライホイールは、取り付けボルトの部分にクラックが入るというウィークポイントなので、純正より安いことも有って、APロッキードのクラッチとセットになっている強化品を使うが、さらなる軽量化は行わない。
クランクの曲がり調整と共にカウンターウェイトの加工でバランスを取り、振動のない高回転域を期待したい。
ポート研磨も燃焼室加工も行わない。
以前、オーバーレブでバルブキッスをしてしまった時、燃焼室と各ポートを確認しているが酷い段差や瘤などは無かった。 だから今回も必要ないはずだが、バルブの当たり面は見て貰う。 付着しているカーボンは少し有るようなので、そのあたりは除去して貰う。
悩んでいるのはラッシュアジャスターだ。
ヘッドから異音が出たときにメカタペに変更しているのは周知の通り。 しかも春先にクリアランス調整をして貰ったばかり。 バルブの当たり面を調整するとクリアランス調整を再度し直さねばならないが、高回転でのバルブリフトが確実に確保できるメカタペの方が有利ではある。
が、元々ガサツなエンジンがメカタペによって更に煩くなるのだ。 煩いのには慣れた感があるが、多方面から検討してショップと相談の後に決めようと思っている。
ということで、今回のスーパーノーマルなエンジンとは、いわゆるアタリエンジンにすることなのだ。 メタルのクリアランスはショップが拘ってくれるはずだし、その他の所もバランス取りをして気持ちのいいエンジンにしていただく。
今まで中速からの立ち上がりで後塵を浴びていたのが、それが対等になれば後は腕次第で筑波3秒台を狙える....そう甘くは無いか。
それはそうと、先々月に乗らせていただいた程度極上の111Sを思い出した。 あのエンジンは4000回転からカムに乗り、さらに6000から7300迄はもうひと盛り上がりしていた。 あのようなエンジンになって欲しい。
そういえばあの車はミッションも最高であった。 私の下手なシフトチェンジによって痛められたミッション、最初はワコーズを入れたり色々と試行錯誤し、今は糸引きオメガを入れている。 だが、この評判の良いオメガもエンジンの油温が100度を超えてくるとシフトが渋くなるのだ。 私の友人達も同じ意見。 というか友人が先に経験した。
そこで友人達はFuchsのミッションオイルを入れ、シフトとの問題は解消したとの話を聞き、
私も昔からエリーゼを扱っているガレージファイブワンに出向いき、噂のオイルをコッソリと入手した。
今回、オーバーホールに併せてミッションオイルも交換するので、このオイルの相性がどのぐらい良いかは後日報告する。
実はロードスターの仲間からニューテックのミッションオイルが良いと聞いていたので、次はそれを入れようと思っていたのだが、リーズナブルな価格で問題のないFuchsのミッションオイルが良ければ価格も安いし悩みが一つ減る事になって万々歳だ。
私のエリーゼ111Sという車は、気難しいエンジンを積んでいる訳でもなく、足と吸排気しか弄っていないのだから、標高が高かろうが気温が高かろうが走る事だけに専念し、自分の時間を仲間達と目一杯楽しみたいと思っている。
そのためにETCも価格が安くなったので自分で取り付けた。早朝にサーキットや箱根に向かう時に料金所でストレスを感じたくない。 大抵はオープンで走っている事から、モノが飛ばないようにファスナーで口が閉まっているバッグから財布を取り出したり仕舞ったりするのだけでも面倒なのだ。
機械と取付料・登録料で2万円を超えていた時は手を出さなかったが、今は機器と登録込みで1万円を切るタイプも出てきた。 前払いだと5万支払って8千円のオマケが付くのだが、そのオマケ料金程度で手に入れられた。
ネット(楽天)の通販で手に入れたのだが、ヤフーのオークションでも登録料込みの価格で安く出回っているようだ。 取付はオーディオより簡単。 オーディオのユニットを引きずり出し、常時電源とアクセサリー、そしてアースを取り出すだけ。
オークションではエレクトロタップを付けている業者がおり、それをして「便利だ」と評価を受けているようだが、危険なことを承知しているのだろうか。 ショップでもエレクトロタップを平気な顔して使用するところがあるが、あんな危ない物をショップレベルで使用するなと言いたい。
面倒でもシッカリと電工ペンチでカシメて欲しい。 タップを使用して配線すれば、食い込ませる際にビニル被覆を破るのだが、被覆の中の銅線も破断してタッタ数本の銅線で導通しているとしたら定格電流が流れただけでも危険なのだ。 まして車というのは動く物であり、振動で引っ張られて破断しないとも限らない。
オイルがエキマニに掛かっても火災は起きるが、束ねた配線がショートしても火災は起きる。 大抵は見えないところに隠してあるのだから、初期に焦げ臭い匂いがして気が付いても消火できない。 実は私が大学生の時に購入したビートルにエレクトロタップを噛ませたのだが、車内に焦げ臭い臭気が立ちこめても何も出来なかったのだ。 幸にしてオーディオが壊れただけで済んだが、エレクトロタップはやめていただきたい。
今月の半ばには復活予定だが、ピストンリングも交換するので或る程度の慣らしをしなければならない。 アタリ付け程度を想定しているが、それはまた次号で。